様々な業界で推進されているDX(デジタルトランスフォーメーション)
不動産業界でもDX化の推進は課題となっています。
アナログな業務の多い不動産業界では、業務の効率化・コスト削減・労働環境の改善のためにDX化は急務と言われています。
また新型コロナウイルスの影響により、顧客のニーズも変化しました。
変化する顧客のニーズに応え、新しいサービスの開発、提供をするためにもDX化が重要となります。
この記事では、不動産業界のDX化について現状の課題からメリット、実際の導入事例を解説していきます。
目次
不動産業界のDX化とは
不動産業界におけるDX化とは、
不動産領域における集積データの活用や、デジタル技術を活用した業界の横断的なビジネスモデル革新※
をすることであり、推進は喫緊の課題として掲げられています。
そもそもDXとは、デジタル技術を利用してビジネスモデルを変革し、新たな価値を生み出していく取り組みです。
2018年に経済産業省が取りまとめた報告書「DX レポート〜IT システム「2025 年の崖」の克服とDX の本格的な展開〜」により、DX推進の重要性が示され様々な業界でDX推進の取り組みが行われています。
不動産業界の現状と課題
まず不動産業界のDXに関して紹介する前に、不動産業界の現状と課題を整理します。
不動産業界には大きく分けて3つの課題があります。
- アナログな商習慣
- 人手不足
- 消費者ニーズの変化・多様化
です。
これらについて詳しく解説していきます。
アナログな商習慣とコロナ禍の影響
不動産業界では、手書きの書類作成やFAXの利用、対面での接客(内見対応)など様々な業務でデジタル化を進めるのが難しいとされてきていました。
このようなアナログな業務体制を続けると、
- 業務の引き継ぎが困難になる
- デジタル化への移行が困難になる
- 業務コストがかかる
などの影響が出てきます。
しかし、新型コロナウイルスの影響によりテレワークの導入が大幅にされているという調査結果が出ています。※
情報通信業についでテレワークの導入が進んでいます。
またVRを利用した内見や無人内見システムなど、立ち会い不要で内見することができるサービスも増加しています。
消費者ニーズの変化・多様化
新型コロナウイルスの影響もあり、消費者のニーズも変化、多様化しています。
以前までは、不動産を探す際には不動産屋に直接いき、内見や手続きを行うことが当たり前でした。
ソニー損害保険株式会社の調査によると、引越しを検討してから引越すまでの時間は、平均4.5ヵ月だが、その中でも2ヵ月以内に引越しを行う人は約45%、1ヵ月以内に行う人は約20%と、多くの消費者が短い期間で引越しを行っていることが分かりました。
更に引越しの際に、何らかの形でオンラインを活用した人の割合も80%を超えています。
オンラインの活用をしたものとして、物件探し約65%、内見で約15%となっています。
これらの調査結果より、コロナ禍における消費者のニーズが変化、多様化していることが分かります。
人手不足
不動産業界ではアナログな業務による長時間労働や少子高齢化の影響などにより人材不足が課題となっています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の2021年産業別就業者数の調査では、不動産業は全体の2.1%と就業者数が少ないことが分かります。
また物件査定などの業務は知識や経験が必要であり、ベテラン社員しか担当できないケースもあります。
若手へのノウハウ共有も人材不足により行いにくい環境となっている場合も多いです。
そのため人材が育たず、過酷な労働環境は改善されずに新しい人材も増えないという悪循環となってしまっています。
不動産DXを推進するメリット
ここでは、不動産業界でDX化を推進することで得られるメリットを紹介していきます。
主なメリットはこちらです。
- 業務効率化
- 顧客満足度の向上
- 労働環境の改善
これらについて詳しく解説していきます。
業務効率化
まだアナログ業務が多い不動産業界にとって、デジタル化をすることで業務の効率化を図ることが可能です。
デジタルツールの導入により、書類作成や入力作業の自動化、対面接客や問い合わせ対応などの簡略化などが可能になります。
それにより、ヒューマンエラーも防止することができ、人件費などのコスト削減にも繋がります。
またデータ一元管理により、部署や他業界への情報共有も簡単になり新しいサービスの開発なども可能になります。
顧客満足度の向上
消費者のオンライン利用ニーズの高まりなどから、不動産業界全体でDX化を進めることで顧客満足度の向上につなげることができます。
ビッグデータやAIを活用することで、顧客の求めている新しいサービスの開発、提供が可能になります。
また、従業員はより顧客に近い業務に時間を割くことが可能となり新規獲得や既存顧客の満足度向上につなげることができます。
労働環境の改善
DXを推進することで手作業で行っていたことや単純作業を簡略化することができ、課題であった長時間労働を改善することが可能です。
長時間労働を改善することで、慢性的な人材不足の解消にもつながります。
また、ベテランの経験やノウハウを必要とする業務を標準化することができ、人材育成が難しい環境も改善することができます。
不動産DXの導入事例
では実際にDX化を推進している企業の導入事例を紹介していきます。
三井不動産株式会社
三井不動産が手掛ける全ての空間に、デジタルを実装すること。
テクノロジーで不動産ビジネスを変革すること。
をコンセプトにDX化を推進している、三井不動産株式会社。
⻑期経営⽅針「VISION 2025」の中でも、
テクノロジーを活⽤し、不動産業そのものをイノベーション
を掲げており、その実現に最も重要な手段としてDX推進をあげています。
具体的に導入している代表的な事例を紹介します。
ワークスタイリング
2017年にサービス提供を開始し、全国に約150拠点がある法人向けシェアオフィスの「ワークスタイリング」
1ヶ月、1席単位で利用できる「ワークスタイリング FLEX」と10分単位で利用できる
サテライトオフィスの「ワークスタイリング SHARE・ワークスタイリング SOLO」の3つのサービスで新しい働き方を提供しています。
デジタルツールを活用し、QRコードを用いた非接触システムでの入退館やリアルタイムでの利用状況の把握、法人会員のみの安全なセキュリティ環境作りを実現しています。
働く場所を目的やシーンに合わせて自由に選択することが可能になり、業務の効率化、生産性の向上、顧客満足につながっています。
住宅契約電⼦化
住宅契約電子化では、分譲マンション、⼾建ての購⼊における全書類と手続きの電子化を実現します。
こちらは、2022年の夏にサービス開始を予定しています。
電子化により契約の際の事務業務約70%を削減することが可能となり、年間で約3万時間を削減することができる予定です。
また、契約書類などで使用していた紙の使用枚数を年間で約360万削減できる予定です。
消費者にも契約におけるプロセスを効率化でき、膨大な書類もWebで閲覧が可能になります。
野村不動産株式会社
野村不動産株式会社は、株式会社デジタルガレージの開発した不動産関連企業向けサービス「Musubell(ムスベル)」の開発に協力しました。
開発をデジタルガレージが行い、野村不動産は契約業務のフローや書類種別の共有などの協力を行いました。
Musubellは、売買契約時に顧客ごとの必要書類を自動選別・生成、必要項目の自動入力、ステータスをオンラインで一元管理できるサービスです。
Musubellを導入することで、時間をかけていた書類の取得や確認作業をシステム上で実施、ステータスの一元管理が可能になることで業務効率を高めることが可能です。
また、紙の書類を無くし郵送や管理のコストも削減することができます。
顧客にとっては、契約に係る署名や捺印などの負担が軽減し顧客満足度の向上につながります。
株式会社GA technologies
株式会社GA technologiesは、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄2021」に選ばれている企業です。
DX推進の根底に、全ては顧客のためにという想いがあるので、既存のビジネスモデルに捉われず新しいサービスを実現しています。
以下の具体的な取り組みを紹介していきます。
不動産売買・賃貸BtoC向けサービス:RENOSY
RENOSYは、「買う・借りる・貸す・売る・投資する」不動産の各種サービスにおいて、AIやRPAなどのテクノロジーを活用し、顧客に効率的なサービスの提供を実現します。
物件の状態を把握しやすいように3Dを用いたウォークスルー動画の提供やAIを活用した物件の価格査定などデジタルツールの活用で顧客をサポートします。
また、相談や契約部分などは人がしっかりとサポートする体制作りをしています。
テクノロジーと人の両面で顧客の様々なニーズに対応することが可能です。
参考:RENOSY
不動産賃貸BtoBサービス:ITANDI BB(イタンジビービー)
ITANDI BBは、不動産のリーシング業務のワンストップサービスです。
デジタル化により業者間のコミュニケーションの変革を実現します。
問い合わせや申し込み、契約や更新などで行われているアナログなやり取りの業務をデジタル化することで、物件のリアルタイムな情報をITANDI BBに集約させます。
この情報を不動産仲介会社に無料で提供することで、業者間で発生していた確認作業を不要にすることが可能です。
電話やFAXでのやり取りが不要となることで、長時間労働の問題の解決や紙などのコスト削減にもつながります。
このように、ITANDI BBは不動産業界全体の業務の効率化と情報の透明化を実現します。
参考:ITANDI BB
まとめ
この記事では、不動産業界のDX化の重要性を現状と課題、メリットや事例を用いて解説しました。
コロナ禍の影響もあり、不動産業界を取り巻く環境、市場のニーズは大きく変化しています。
変化する顧客のニーズに合わせたサービスを開発、提供し続けるにはDXの推進が必要不可欠です。
DXはただデジタル化をすることではありません。
目指すイメージを明確にし、1つ1つの課題を解決していくことで新たなビジネスモデルを創造することができます。