医療DXとは?医療現場の課題から取り組み事例まで徹底解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は様々な業界で一般化しています。

医療業界でもDXの推進は必要不可欠なものとなっています。

今回は、医療業界におけるDX化とは何かを解説していきます。

DXの定義から現状の医療業界の課題、DX化で実現できることや企業が取り組んでいる事例を紹介することで、医療DXの重要性を解説します。

医療DXとは

医療DXとは、

医療機関がデジタル技術やデータを活用し、変化する環境の中で患者や社会のニーズに対応するサービスを創造し、ビジネスモデルを変革し、医療提供の課題を解決すること。

です。

そもそもDXとは、経済産業省のデジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインによると、

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジ タル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのも のや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

と定義されています。

※経済産業省:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインより

DXの定義をより分かりやすくすると、

デジタル技術を利用してビジネスモデルを変革し、新たな価値を生み出していく取り組み

といえます。

医療業界のDXを推進することで、医療に関わるビジネスモデルを変革し新しいサービスや価値を生み出すことを実現します。

医療業界の現状と課題

実際に医療業界ではどのような課題があるのでしょうか。

主な課題として、以下の2点が挙げられます。

  • 2025年問題が与える影響
  • 医療従事者の労働環境

これらの課題について解説していきます。

2025年問題が与える影響

※厚生労働省:今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像~  P1

2025年問題は医療業界に大きな影響を与えます。

令和4年3月の日本の総人口は1億2526万人です。日本の総人口は2008年をピークに減少を続けています。

このような状況の中、2025年には団塊の世代(ベビーブーム世代)が75歳以上になり高齢者が約3,500万人になると推計され、超高齢化社会になると言われています。

これが2025年問題です。

2025年には国民の4人に1人が高齢者になると言われており、医療サービスなどが行き届かなくなることが懸念されています。

また少子高齢化の影響で日本全体の労働力は減少し、医療業界の人材不足にもつながります。人材不足による医療現場の労働環境の悪化も危惧されます。

参照:総務省統計局 人口推移

医療従事者の労働環境

医療従事者の労働環境の改善も課題となります。

具体的には、長時間労働が挙げられます。

※厚生労働省:医師の勤務実態について P5

厚生労働省が2020年に公表した「医師の勤務実態について」の資料によると、1週間の勤務時間が60時間を超えている病院・常勤勤務医は男性で41%、女性で28%となっています。

また全診療科の平均は56時間22分となっています。

この結果は、労働基準法で定められている労働時間を超えていることを示しています。

労働基準法では労働時間は休憩を除き1週間に40時間、時間外労働は月に45時間(1週間で約11時間)と定められています。

つまり労働時間は1週間で約51時間までとなります。

(医師を除いた医療機関が対象。医師は現在対象外。)

このように、医療従事者の長時間労働は課題となっています。

また、医療事務業務のデジタル化が進まないことも課題として挙げられます。

1999年にカルテの電子化が認められ、導入が進められています。

大規模病院の多くでは電子カルテが導入されている一方で、まだ手作業の業務が多いのが実態です。

原因として、患者側の紙のニーズが高いことや外部とのやり取りが紙文書で行われることなどがあります。

電子カルテを使用している医療現場でも、スマホやパソコンを持たない高齢者には紙のやり取りが必要となったり、外部との紙文書のやり取りは電子化することが作業負荷となっている場合があり、事務作業のデジタル化が進まない状況となっています。

医療DXで実現できること

医療DXを推進することで実現できることを紹介します。

医療事務作業の効率化

医療現場における様々な事務作業は、DX化により効率化を図ることが可能です。

RPA(単純作業をロボットで自動化できるツール)を導入することで、医療物資の在庫管理や経理書類、レセプト(診療報酬明細書)の作成などの作業を自動化し、作業負荷や人的ミスの削減につながります。

また、予約や来院の受付業務、会計などもデジタルツールを活用することで効率化することが可能です。

医療事務作業を効率化することで、医療従事者の労働環境を改善すると共に患者にとっても待ち時間が短縮されるなどの利点があります。

オンライン診療の実用化

新型コロナウイルスの影響により、2020年4月厚生労働省は初診患者のオンライン診療を始めることを発表しました。

オンライン診療はICT(情報通信技術)を活用し、スマートフォンやタブレットで自宅から診療を受けることができるサービスです。

オンライン診療により、患者の通院の手間や待ち時間、病院内の感染リスクなどの問題を解決することが可能です。

また、医師の移動時間の短縮や受付業務の削減などによる医療現場の効率化にも効果的です。

問題となっている、地域医療の格差もオンライン診療の普及により解消することが期待されています。

オンライン診療の実用化により、高齢化が進む課題に対して患者の通院や医師の訪問診療を不要にすることでより多くの患者の診療を可能にします。

BCP(事業継続計画)の強化

BCP(事業継続計画)は自然災害やテロ、システム障害などの状況になった時、事業の損害を最小限に抑え早期復旧させることを目的としています。

医療現場においても、電子カルテの導入が進んでいることなどからデータ管理されている情報が多くあります。

クラウドサービスを活用することで医療データのバックアップや外部との情報共有が容易となり、BCP強化の観点からもクラウド化は効果的だといえます。

研究・開発への医療ビッグデータ活用

医療ビッグデータの活用も進んでいます。

膨大な量の診察データや検査データを活用することは、再生医療や予防医療、製薬分野において高い成果が期待できます。

AIを活用しビッグデータを分析することで、開発スピードを高め、コスト削減につなげることも可能です。

医療ビッグデータには患者の個人情報が含まれるため、セキュリティ対策は必須となっています。

医療業界のDX化取り組み事例

医療DXに取り組んでいる企業のサービス事例を紹介します。

NEC

NECでは医療DXに向けてクラウドサービス事業を強化し、2021年からサービスを提供しています。

NEC

クラウドセキュア接続サービスの「MegaOak Cloud Gateway」を通じて、

  • オンライン診療・カンファレンス支援サービス:MegaOak Telehealth
  • デジタル問診サービス:MegaOak Template for 問診
  • 音声サポートサービス:MegaOak Voice Assist

の3つのサービスを提供しています。

MegaOak Cloud Gatewayを基盤に、3つのサービスを提供することで医療DXを推進し、患者や医療従事者の環境改善の実現を目指しています。

それぞれのサービスについて紹介していきます。

MegaOak Cloud Gateway

電子カルテシステムと医療現場を支援するサービスを安心安全に接続するクラウドサービスです。

【主な機能】

  • 暗号化された通信経路とアクセスの制御
  • 不正アクセスやセキュリティリスクを検知、対応
  • システム稼働状況を24時間把握し、適切なパフォーマンスを提供

【主な導入メリット】

  • 3省2ガイドライン(総務省・経済産業省・厚生労働省が制定する安全管理のガイドライン)に対応したデータの一元管理ができ、セキュリティ対策の負荷を軽減できる。
  • 電子カルテを含むさまざまなサービスの認証を一元化し、操作性を向上させると共に管理負荷も軽減することが可能になる。
  • 標準的医療データ連携に対応しデータ連携にかかる負荷を軽減できる。

※参照:https://jpn.nec.com/medical_healthcare/cloudgateway/

MegaOak Telehealth

かかりつけ医と特定機能病院と連携の取れる中核病院において、オンライン診療と施設間の連携のオンライン化を実現するクラウドサービスです。

【主な導入メリット】

  • 電子カルテと連携させることで、オンライン診療の際の予約や患者情報の共有をスムーズにし、取り違えリスクも軽減させます。
  • 地域医療従事者のカンファレンスのオンライン化が可能となり、医師の働き方改革につながります。
  • 紹介予約や受け入れの調整をオンライン化し、病院間の業務を効率化でき、事前の患者情報の連携も可能にします。

※参照:https://jpn.nec.com/medical_healthcare/telehealth/index.html

MegaOak Template for 問診

紙で記入を行っていた問診票を患者や院内で使用するデバイス(スマートフォンやタブレット)から入力を可能にするクラウドサービスです。院内外で入力することができます。

【主な導入メリット】

  • 電子カルテと連携し、問診票の項目入力の作業負担を軽減します。
  • 患者自身が事前に問診票の入力が可能となり、受付やヒアリングなどの業務を効率化させ、待合室の混雑緩和にもつながります。
  • 多数のテンプレートにより、問診票の内容を柔軟に設計することが可能です。

※参照:https://jpn.nec.com/medical_healthcare/monshin/index.html

MegaOak Voice Assist

医療専門用語に対応した音声認識エンジンにより、看護師の発話内容をテキスト化、電子カルテに転記可能な仕組みを実現したクラウドサービスです。

【主な導入メリット】

  • 音声入力により手書きの記録業務を効率化させます。
  • ケア内容をその場で音声メモで記録することが可能で、電子カルテと連携し、看護記録業務の効率化につながります。

※参照:https://jpn.nec.com/medical_healthcare/voiceassist/index.html

キヤノンITソリューションズ株式会社

キヤノンITソリューションズ株式会社では、ドクターズ株式会社と連携して医療DXに向けたサービスの開発サポートをするサービスを提供しています。

キヤノンITソリューションズ株式会社

医療現場の知見をもつドクターズ株式会社が事業戦略を支援し、キヤノンITソリューションズ株式会社がシステム構築やサービスを提供します。

具体的なサービス事例として、「医療情報ガイドライン適合性診断」を紹介します。

医療情報ガイドライン適合性診断は、3省2ガイドライン(総務省・経済産業省・厚生労働省が制定する安全管理のガイドライン)に対応しており、アマゾンウェブサービス上で実施されている、または実施検討しているシステムやサービスの医療情報ガイドラインへの適合性を診断するサービスです。

不適合の項目がある場合は、改善案を検討し対応します。

このサービスを活用することで、企業の医療DXに向けたサービスの開発をサポートします。

開発企業は工数を削減することが可能となり、スピーディなサービス提供が可能となります。

まとめ

今回は医療DXについて、課題やDX化によって実現できること、企業の取り組み事例を解説しました。

医療業界は他業界と比較し、DX化が遅れているとされています。

新型コロナウイルスの影響により、医療現場には大きな変化が起こりました。

医療DXを推進することで、医療業界の課題を改善し、より安心安全な医療体制作りが可能となります。