製造業のDX化とは?課題やメリットから事例紹介まで徹底解説

様々な業界で進められているDX(デジタルトランスフォーメーション)

もちろん製造業でも同様にDX化が推進されていますが、IT化、デジタル化とどう違うのか分からない方も多いのではないでしょうか?

この記事では、製造業のDXに関する課題から進め方、導入事例を紹介します。

製造業DXとは

製造業でのDXとは、データやデジタル技術を活用してものづくりの現場のノウハウを整理、共有しやすくすることです。

ノウハウの整理・共有により、生産性・品質を向上させ、顧客のニーズに合わせてビジネスモデルに変革をもたらすことを目指します。

具体的には、IT技術やロボットを導入し製造プロセスの自動化、データの一元管理・分析などを行うことで新しい製品を開発したり、生産性を向上させコストダウンやリードタイム短縮を仕組み化することが挙げられます。

そもそもDXとは

DXとは、

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジ タル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのも のや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

と定義されます。

※経済産業省:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドラインより

DXの定義をより分かりやすくすると、

デジタル技術を利用してビジネスモデルを変革し、新たな価値を生み出していく取り組

といえます。

製造業でDXが重要視されている理由

製造業はコロナ禍の影響もあり、市場のニーズの変動が大きい予測の難しい業界です。

財務省のレポート※には、新型コロナウイルスの影響で生産・販売計画の見直しをした製造業の企業は、調査対象476社中209社と43.9%となっています。

※財務省:新型コロナウイルス感染症による企業活動への影響とその対応 (6)企業の対応より

製造業は外的要因により事業判断に影響が出やすく、かつ予測して対応することが難しいことがわかります。

そんな背景から、製造業のDX推進は重要視されているのです。

製造業DXの課題

製造業のDX化を推進していくためには、どのような課題があるのでしょうか?

主な課題は以下の3つです。

  • 効果的なデジタル化、データ活用ができていない
  • 人材不足
  • 属人的な技術の継承

効果的なデジタル化、データ活用ができていない

製造業のIT投資の現状は、旧来の基幹システムの更新、保守が目的となっており効果的なデジタル化、データ活用ができていません。

2016年以降、データ収集に取り組んでいる企業は減少しており、データ活用に取り組んでいる企業の割合も増えていません。

経済産業省:製造業を巡る動向と今後の課題より

オーディナリー・ケイパビリティ※1を重視する企業は、システムの更新や保守を目的にIT投資をします。

逆にダイナミック・ケイパビリティ※2を重視する企業は、業務効率化やコスト削減、ビジネスモデルの変革などの目的でIT投資をします。

上記より製造業の現状は、オーディナリー・ケイパビリティ重視の企業が多く見受けられます。

しかし、変動の大きい製造業だからこそダイナミック・ケイパビリティを重視する企業が行うIT投資をする必要があります。

※1「ものごとを正しく行うこと」与えられた経営資源を有効活用して、利益を最大化しようとすること。

※2「正しいことを行うこと」環境や状況の変化に応じて、企業内外の資源を再構成し自己変革をすること。

人材不足

少子高齢化の影響により、日本全体の人口は減少しています。

現在のペースで少子高齢化が進むと40年後の労働人口が4割減少するという予測※もあります。

労働人口が減少するという点は、現場の人の力が必要な製造業にとって大きな問題となります。

みずほリサーチ&テクノロジーズ: 少子高齢化で労働力人口4割減、 女性労働力率の男性並み引上げを

属人的な技術の継承

生産現場において、専門技術者にしか分からない、対応が出来ないという属人的な状況になってしまっているケースも少なくありません。

日本の製造業では、熟練の技術者による経験や勘でものづくりが行われてきた背景があります。

人材不足も影響し、技術の継承が滞ってしまっているという課題に直面しています。

製造業DX化のメリット

製造業のDX化を推進することで、得られるメリットは多くあります。

メリットは主に以下の3点です。

  • 生産性の向上、コスト削減
  • 技術の属人化を防止
  • 新しい製品やサービスの開発

生産性の向上、コスト削減

製造業における受発注管理や在庫管理などさまざまな管理をIT/IoTツールを活用することで効率化を図ることができます。

ヒューマンエラーや製造工程でのトラブルがなくなり生産性が向上するだけでなく、今まで人が行っていた作業が自動化されるので、生産コストや人件費を抑えることにも繋がります。

属人的な技術の防止

DXを推進することで、これまで属人的になってしまっていた技術を平準化することが可能です。

生産におけるノウハウをデータ化することで、誰でも把握することができます。

技術の平準化によって、技術を継承できないという課題は解決するのです。

新しい製品やサービスの開発

DXを推進することで、新しい製品やサービスの開発も相乗的に進みます。

生産性が向上することで、より多くのリソースを開発に注ぐことができるだけでなく、独立していた各部門の連携を強化することでスピード感を持った開発も可能になるからです。

市場のニーズに合った製品・サービスをスピーディーに提供することで顧客満足度の向上にも繋がります。

製造業DXの進め方

それでは、実際にどのように製造業のDX化を進めていけば良いのでしょうか?

DX化にとって大事なことは、ゴールをイメージして段階的に取り組んでいくことです。

目指す姿に向けて、以下の4つのステップで進めていきます。

  • 課題の明確化、目標設定
  • データ収集、分析、人材の確保
  • 業務の効率化
  • ビジネスモデルの変革

①目指すイメージの共有・明確化

まず行うことは、社内全体で目指すイメージを共有、明確化することです。

DXは会社全体で取り組む必要があります。

各部門でIT化・デジタル化を進めていては、DXは実現できません。経営陣が実現するイメージを明確にし各部門と協力しDX化を進めていく必要があります。

実現したいイメージを考える上では、まず現場で抱えている課題は何かを把握することが効果的です。

具体的に「何を」「どうやって」解決するのかを考えることでDX化の戦略が見えてきます。

②データ収集・分析、人材の確保

目指すイメージが明確になったら、現状のデータ収集と分析を行います。

データシステムが老朽化や複雑化、ブラックボックス化しているとデータ連携や各部門とのデータ一元管理の妨げになります。

正確なデータを集め、分析することで効果的にDXを推進することができます。

もちろん人材の確保も必要です。DX推進の専門部門を立ち上げることで、人材の育成も行うことができます。

③業務の効率化

データ収集・分析ができたら、業務全体の効率化を図ります。

業務効率化を進める際のポイントとして、まず各部門の小さい業務からIT化・デジタル化を行うことです。

DXで目指すイメージに向けて短期間で大きな変革を起こそうとすると、社内に混乱を招いてしまいます。失敗した時のリスクも大きいです。

各部門から業務の効率化を進め、効果検証を行い、成果を確認した上で次の改善に取り組むことで、スムーズに業務を効率化することができます。

④ビジネスモデルの変革

DXを推進し新製品やサービスの開発を行うことで、最終的には新しいビジネスモデルの創出に繋がります。もちろん既存製品の付加価値を向上させることも重要です。

変化する顧客のニーズに合わせて、ビジネスモデルを変革することまでできたら、DX化は成功したと言えるのではないでしょうか。

製造業DXの事例

実際に国内企業でDXに取り組む事例を紹介していきます。

トヨタ自動車株式会社「工場IoT」

【課題】

製造・顧客から得たデータを技術開発へタイムリーなフィードバックができていない。

【取り組み】

(1)目的

  • 「現有資産の最大有効活用」:すぐに着手できるよう、既存の設備を活用
  • 「拾い切れていない現場の困りごとをAIで解決」:データ分析の効率化
  • 「FA機器類からのデータ授受」:ログデータとして現有資産に保管されたデータの有効活用
  • 「セキュリティ対策」:外部と接続するIoT工作機器などへの対応
  • 「IE化されていない設備の標準化」:インターフェースの標準化

(2)取り組み内容

  • 工場横断の共有プラットフォームを2〜3年かけて段階的に投資。
  • 製造部門では、各社員が小規模なテーマの計画〜効果検証まで行うボトムアップの取り組みを行い、人材の育成も兼ねた。

(3)ポイント

  • セキュリティ対策された環境の構築。
  • データ収集、蓄積において、無駄なデジタル化をしない。
  • 教育支援、BI・AIなどの便利ツールをプラットフォーム上に用意。

【成果】

  • 各部門にて「工場IoT」のプラットフォームを使った現場プロジェクトを立ち上げ、取り組みの数を増やし、トータルで費用対効果を上げることに成功。
  • 品質・商品力向上、法規への対応など、付加価値向上に関わるデジタル化への着手。(エンジニアリングチェーンやサプライチェーンを含む)

参照:製造業DX取組事例集 P16

富士通株式会社「FTCP (設計開発プラットフォーム) 」

【課題】

  • 製品開発:製品の多様化への対応、納期の短縮化への対応、製品の複雑化・高密度化への対応、技術継承の継続強化。
  • 製造現場:ものづくりのノウハウ伝承、人材不足への対応。
  • 全社課題:調達・管理コスト削減、事業部間の連携強化など。

【取り組み】

(1)目的

  • 製品開発におけるノウハウの共有、リアルタイムでのコミュニケーションの円滑化。

(2)取り組み内容

  • 「富士通生産方式(FJPS)」として、人に依存しないものづくり。必要なツールの作成。プロセスの同時進行化。これらを富士通グループ全体で推進。
  • 設計のデジタル化プラットフォーム「FTCP」を構築。

(3)ポイント

  • 開発期間短縮のため、AIなどの一部はオープンソースを活用。
  • 「FTCP」上のツールを継続的に活用するため、ルールの整備、製品開発フローの整備、事業部ごとの監査・評価、全社的な比較を実施。

【成果】

  • 製品開発プロセスの手戻り減少、品質向上、納期短縮を達成。
  • 設計段階における不具合抽出、製造しやすい設計の追求が可能になった。
  • 製造技術部門の負荷が低減された。
  • 「FTCP」導入前の支援的なサービス提供をスタート。

参照:製造業DX取組事例集 P8

三菱電機株式会社「e-F@ctory」

【課題】

自社製品を効果的に連携させることができていない。

【取り組み】

(1)目的

  • 工場現場の自働化のための機器を連携させることで工場内に埋もれているデータの価値を見出し、コスト削減や品質向上につなげる。

(2)取り組み内容

  • 「e-F@ctory」実現のための、3つの基本技術を開発。
    1. 生産現場データとITシステムの接続や処理の技術。
    2. ロボット技術やセンサー機器を統括制御し、生産現場から必要なデータを収集する技術。
    3. 生産現場でのデータの高速通信、効率的に収集する技術。
  • 自社モデル工場を増やし、課題に対して機器やサービスの改良を重ね、ソリューションとして社外に提供。

(3)ポイント

  •  IoT化指標を作成し、顧客の状況や悩みを把握した上でソリューションを導入する。

【成果】

パートナープログラムである「e-F@ctoryAlliance」を発足させたことで、エンジニアリングチェーンとデータ連携が可能になった。

「Edgecrossコンソーシアム」に参画したことで、互換性のあるサービス展開が可能になった。

参照:製造業DX取組事例集 P28

オムロン株式会社「i-BELT」

【課題】

  • 開発、設計後グローバルで工程設計を行うことで運用の確立、カルチャーの融合を重要視し、標準化に向けたデータの流れを考えられていなかった。
  • データの現状把握→可視化→課題・ゴール設定→業務設計という仕組みを構築できる企業、またはできる人材がいる企業が国内に少なくなっている。

【取り組み】

(1)目的

  • 顧客と共創し、生産現場データを活用しリードタイム短縮、稼働ロス低減、エネルギー効率向上などを実現。
  • 日本企業のデジタル化推進に貢献する。

(2)取り組み内容

  • 「i-BELT」を生産管理、品質管理、設備効率、エネルギー の4つの面で展開。
  • 組織の連携強化プロセスの支援サービスを提供。

(3)ポイント

  • 様々な技術や知見の棚卸をし現状把握。効果的なデジタル化を見極める。
  • データの流れやプロセスを可視化し、構造化をする。
  • 顧客の既存資産を活用し価値が最大化できる部分に対し、データ化や最適化を提案。
  • 全体最適の視点で、製造プロセスの構造化や目指す状態の明確化に注力、デジタル化、グローバルスタンダード化しやすい状態の構築を重視。

【成果】

  • 製造現場において作業効率の安定化、工具の摩耗量の削減、加工時間の削減などを実現。
  • 他社への展開により、コア技術の形式化と現場モチベーションを向上させ、国内企業のデジタル化の推進に貢献。

参照:製造業DX取組事例集 P39

まとめ

今回は、製造業におけるDXの定義から課題、進め方や実際の取り組み事例を解説しました。

日々変化する顧客のニーズに対応し、顧客満足度の高い製品・サービスを提供するためには、戦略的なDXの推進が不可欠です。

製造業DX化は、目指すイメージを明確にし、一歩一歩取り組むことが重要です。

長期的な取り組みを必要とするDX化、今一度検討してみてはいかがでしょうか。