物流DXで業界が変わる?課題から取り組み事例まで徹底解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)は様々な業界で注目され、取り組みが行われています。

特に物流業界においてはDX化が急務とされています。

その理由として、労働力不足や新型コロナウイルスにより市場の変化などがあります。

この記事では、物流業界のDX化について解説していきます。

物流DXの定義から、現状の課題、推進されている取り組みや企業の導入事例まで物流業界のDX化について紹介します。

物流DXとは

物流DXとは、

機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること

と国土交通省の総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)にて定義されています。

また、物流DXにより他産業に対して物流の優位性を高め、日本産業の国際競争力強化につなげることを目的としています。

総合物流施策大綱では、具体的に以下の2つの目標を掲げています。

  • 既存のオペレーション改善・働き方改革を実現
  • 物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新

国土交通省:総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)概要 P9

国土交通省の総合物流施策大綱とは

総合物流施策大綱とは、物流施策の指針です。

本大綱のもと各関連部門で連携をとり、日本を支える物流、日本産業を成長させる物流を作り上げることを目的としています。

令和3年6月に閣議決定された総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)では、今後目指す方向性として以下の3点を掲げています。

  1. 物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)
  2. 労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流の実現)
  3. 強靱で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流の実現)
国土交通省:総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)概要 P1

物流業界の現状と課題

ここでは、物流業界の現状と課題について紹介していきます。

新型コロナウイルスの影響でモノの動きが活発化したことにより、物流を取り巻く環境は劇的に変化しています。

このような状況を踏まえて、主に以下の課題が挙げられます。

  • 労働力不足と厳しい労働環境
  • EC市場急成長による小口配送の増加
  • 機械化やデジタル化が困難

課題1:労働力不足と厳しい労働環境

物流業界では、労働力不足が明らかになっています。

他産業と比較しても、人手不足感が強まっているデータが出ています。※1

また物流・運送業を支えるトラックドライバーに関しても、2019年の調査では約7割もの企業が「不足している」「やや不足している」と回答しています。

さらにトラックドライバーは、全職業の平均と比較して約2割も労働時間が長く、約1〜2割年間所得額が低い状況が続いています。※

このような過酷な労働環境により、若年層の労働力の確保が難しくなり労働者の高齢化にもつながっています。

※国土交通省:最近の物流政策について P3、P4

また少子高齢化による労働人口の減少の社会問題化もあり、物流業界でも労働力の確保が課題となっています。

課題2:EC市場急成長による小口配送の増加

EC市場の急成長(楽天やAmazon、メルカリなどの利用者増加)により、企業でなく個人顧客(BtoC、CtoC)への小口配送が増加しました。

さらに、コロナ禍の影響でEC市場の成長はさらに加速しました。

2020年度の宅配便取扱個数は、2019年比で約10〜20%増加したとされています。※

※国土交通省:総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度) P10

小口配送の増加は更なる労働力不足を生むだけでなく、配達ルートの複雑化や再配達の対応などによる配達業務の非効率化が懸念されています。

課題3:機械化やデジタル化が困難

物流業界は、配送先や荷物の量、品目が毎回異なるなど業務に対して細かい条件(ルール)が示されることが多いです。

また、日本国内の物流現場の労働者はスキル、ノウハウのレベルが高く、現状でも高水準のサービスを提供できています。

これらの理由により、機械化やデジタル化を進めることが困難になってしまっている点が課題として挙げられます。

物流DXを推進する取り組み

ここでは国土交通省の総合物流施策大綱にて推進されている取り組み、

  • 物流の機械化
  • 物流のデジタル化

を紹介します。

機械化とデジタル化が連携することで、サプライチェーン全体の情報の見える化、作業プロセスの簡略化・定常化をすることができます。

それにより物流DXが目指す目的の実現に繋げることができます。

物流の機械化

物流の機械化の主な取り組み例として、

  • トラック隊列走行や自動運転トラックの活用
  • ラストワンマイル配送の効率化
  • 倉庫内作業の自動化・機械化

が挙げられます。

トラック隊列走行や自動運転トラックの活用

トラック隊列走行や自動運転トラックの活用は、トラックドライバーの労働力不足の解消や燃費の改善による生産性の向上に大きな効果を与えると期待されています。

2021年には、高速道路での後続車無人隊列走行を実現しました。※

2025年度以降、高速道路においてレベル4(高度運転自動化:限定領域においてシステムが全ての動的運転タスクを担う)自動運転トラックの実現を目指します。

※経済産業省:高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行技術を実現しました

ラストワンマイル配送の効率化

ラストワンマイル配送は、小口配送の効率化につながるだけでなく、過疎地域における効率的な配送を推進し、地域に住み続けられる環境を整備することにもつながります。

ラストワンマイルとは、顧客(エンドユーザー)と物流の最終拠点をつなぐ最後の配達区間を指します。

山梨県小菅村ではドローンを使用した配送の実証が行われ、配送実績は国内最多の230回を超えています。※

このようなドローンを使用したラストワンマイル配送の取り組みは、業務の効率化、生産性の向上の実現を可能にします。

山梨県小菅村におけるドローンを活用した新スマート物流の取組み

倉庫内作業の自動化・機械化

倉庫内作業の自動化・機械化により、作業負担の軽減やヒューマンエラーの減少を可能にし生産性を上げることができます。

具体的には倉庫などの物流施設でピッキングやパレタイズの作業を行うロボットや無人のフォークリフト搬送車の活用など、様々な機器やシステムの導入を進めています。

機器やシステムの導入には投資が必要なことから、総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)には導入支援策をさらに強化すると記されています。※

※国土交通省:総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)P16

物流のデジタル化

物流のデジタル化の主な取り組み例として、

・SIPスマート物流サービス

が挙げられます。

SIPスマート物流サービス

国土交通省:最近の物流政策について P19

2018年に始まったSIPスマート物流サービスでは、物流(モノの動き)、商流(商品情報)のデータ基盤を構築、活用することで、事業者間の連携を効率的に行う取り組みを推進しています。

この取り組みにより、異業種間で物流をマッチングさせ積載効率を向上させたり、データ連携により新しいサービスの開発などを行うことが可能になります。

物流・商流データの見える化により、サプライチェーン全体の生産性の向上を目指す取り組みとなります。

物流DXの企業導入事例

ここでは、実際に企業で導入されているDX推進の施策を紹介していきます。

SGホールディングス株式会社

佐川急便グループの持株会社であるSGホールディングス株式会社は、国内宅配便のシェアで国内2位の企業です。

経済産業省の選定するDX銘柄2021に選ばれています。

SGホールディングスグループ DX戦略 P5

SGホールディングス株式会社では、

  • デジタル基盤の進化
  • サービスの強化
  • 業務の効率化

の3つのDX施策を連携させDX化を推進しています。

具体的な事例としては、ITにより主要となる各指標KPI(単価、個数、原価、品質、キャパシティなど)を可視化しています。

これにより荷物1つ1つの採算管理が可能になり、安定した事業成長を実現しています。

また他社企業と連携し、AIシステムを導入しドライバー業務や倉庫、オフィス業務の効率化を図っています。

業務の効率化をすることで、顧客満足度を高めることにもつながっています。

株式会社日立物流

日立グループに属する株式会社日立物流は、LOGISTEED(LOGISTICS・Exceed・Proceed・Succeed・Speedを融合した言葉)を掲げ、事業や業界を超えた新しいイノベーションの実現を目指しています。

DX戦略 -「LOGISTEED 2021」実現に向けて- P2

エクスターナルDX(社外向け施策)とインターナルDX(社内向け施策)を重点施策として取り組んでいます。

エクスターナルDX(社外向け施策)では、以下の施策を行っています。

  • サプライチェーン上のデータの一元管理、可視化することで課題解決をサポート。
  • 自動化、省人化のノウハウ、デジタル技術を組み合わせ、業界ごとに標準化し提供。
  • IoTテクノロジーにより輸送事業者の業務効率化、事故ゼロ化を支援するサービスプラットフォームの提供。

インターナルDX(社内向け施策)では、主に以下の施策を行っています。

  • 社内の業務、顧客データをプラットフォームに集約、標準化し蓄積。
  • 在庫管理や作業指示などの作業を業界ごとに標準化し、複数の拠点で最適運営するプラットフォーム。

このような施策を行い、物流分野だけでなく製造などの他業界との協創領域の拡大を目指しています。

日本郵船株式会社

日本の3大海運会社の1つである日本郵船株式会社では、IoTデータ活用に早くから注目しDX化を推進しています。

経済産業省の選定するDX銘柄2021に選ばれている企業です。

2008年頃から「船舶IoT」を進めています。

こちらは、運航船のエンジンや様々な装置にセンサーを搭載しデータを収集し、収集したデータを元に安全運行に活用するプロジェクトです。

データを収集することで、早期に異常検知することができ、燃料消費を抑えるなどの効果をもたらしています。

参考資料:ドメイン知識とAI(ビッグデータ、機械学習)を融合させた日本郵船のDX活動

ヤマトホールディングス株式会社

「デジタルテクノロジーでヤマトグループを変革する。そして物流を変え、社会を変える。その先にあるのは、豊かな未来の社会。」

をミッションに掲げDXを推進しているヤマトホールディングス株式会社。

ヤマトグループではDXを推進する部門「Yamato Digital Transformation Project」(YDX)を設置し、デジタルテクノロジーによって組織、業務、事業の変革を目指しています。

YAMATO NEXT100 P6

また2020年に策定された経営構造改革プランの「YAMATO NEXT100」の3つの事業構造改革の1つに、宅急便のデジタルトランスフォーメーションが掲げられています。

デジタル化とロボティックスの活用により、収益基盤の強化や顧客満足度の向上につなげることを目的としています。

まとめ

今回は物流業界のDX化について、定義から物流業界の課題、実際の取り組みや企業の導入事例を解説しました。

物流DXは、機械化やデジタル化をするだけでは目指す目標を実現することはできません。

変化する環境や多様化するニーズに対応するためにも、DX化による業務の効率化や生産性の向上は必要不可欠です。